ネットワークのゲンバ ~ShowNetを支えるメンバーたちの奮闘ブログ~

2014/05/29

NocTeam

インターネット未来予想図 Worst Case, Practice and Best Case


みなさま、こんにちは、ShowNet 2014 NOC チーム ジェネラリスト(取りまとめ役)の奈良先端科学技術大学院大学 櫨山寛章(はぜやま ひろあき)です。2014年第1回目のゲンバブログになります。今年のテーマ は
『Scratch and Rebuild the Internet - phase 1 : tough core, soft edge, for future apps 』
になります。今回の投稿では経緯を簡単に説明して行きたいと思います。




shownet-2014-logo






Interopは昨年20回目、今年 2014 年は21回目とちょうど区切りの年となります。2013年ブログの最終回に掲載した技術報告書でも取り上げましたが、ShowNet 2013 NOC チームは反省会の際に、「この先、インターネット技術は生き残るのだろうか? Interop 30thを迎えることが出来るのだろうか?」という思いに駆られ、「やはり、東京オリンピックを向かえ、その後Interop 30th で新しいチャレンジとBest Current Practice を追求していくイベントとして維持して行きたい」と考えました。

次の10年、インターネットおよびインターネットを使うさまざまなモノがより快適に、より楽しく、安心して使えるようになるために、今改めて見直す時期に来ていると考えています。IPv6 launch などさまざまなIPv6 への移行推進イベントが行われているにもかかわらず、IPv6 への対応すら知らないサービスや、中途半端なIPv6 対応で不快になってしまっている問題などがあります。実際Interop の公式ウェブサイトでも、中途半端なIPv6 対応のため、デュアルスタックサービスを提供しているOCN や各大学のネットワークから閲覧できないという問題に出会い、2014 NOC 一同でデバッグをあわてて実施したりしています。IP 以外にも、公衆無線LANサービスで快適に使えるところと、電波干渉がおきまくってて5分に一回セッションが切れ、何度も何度も認証画面のログインをくりかえしたり、さっきまで使えていたはずの無線LANサービスで、急に名前解決が出来なくなってサービスが見れなくなってしまうなど、皆さんも体験したことはないでしょうか?(私は、何度も体験して「イラッ!」としてます。)

一方で、Microsoft がXbox One で本格的に native IPv6 を使い始めたことはIPv6移行の推進の上で非常にインパクトがあります。 無線LANに関しては東京メトロのMANTA、京都の地下鉄、JRの駅ホーム、空港のWiFi サービスのように公共交通インフラで手軽にインターネットが使えるようになってきています。初めての場所でとりあえず道に迷ったらiPod touch でインターネットに接続してGoogle map が出来るという、うれしい世の中になり始めています。また、私は、最近ひょんなことからDNS64/NAT64 や464 技術に関するワークアラウンドの整理に関するお仕事に関わることになり、いろんなinternet draft を執筆する過程で奈良先端大の無線LAN環境で実際にDNS64/NAT64 の環境を構築して、特にnative IPv4を必要としなければDNS64/NAT64の無線LAN 環境でお仕事をするというIPv6 only Life を送ってみたりしています。意外と快適ですが、単にアプリケーションがIPv6未対応という問題以外にも、IPv6と無線LANデバイス、さらにその上でやりとりされるHappyEyeballやアプリケーションプロトコルの相性が混ざり合った、何が原因で起きているかよくわからない不具合(結局使えるけど快適ではない使用感)もいろいろ見つかっています。
アプリケーションのほうに目を向けると、LINE、ツイキャス、Vineなど新しいアプリケーションは若い子達はみんな使っていますし、周りでは大人も子供も艦コレかパズドラは誰かがやっているのを必ずみかけます。KADOKAWAとDWANGO の経営統合のニュースから、より面白いインターネットアプリケーション、インターネットコンテンツが出てくる期待が高まっています。私が所属している奈良先端大ではGoogle Glass をつけて生活し始めているかっとんだ先生もいらっしゃいますし、さっぽろ雪まつりなどでの4KTV / 8KTV 伝送トライアルに関わっている先生もいらっしゃいます。このように、インターネットはやはり面白く、楽しく、新しい未来が待っているはずです。

このような不安と期待が入り混じっているのが現状に対して、現実に対する不満を踏まえた『最悪のシナリオ』と、こうなったら良いな・こうなったら面白いなという『』、それらを踏まえた『現実』に対する『Best Current Practice』は、いったいどのようなソリューションになるのか?という疑問にNOCジェネラリストチームは至りました。そこで、Interop 20th までのShowNet に関わってきたNOC アドバイザリ、ShowNet 2013 NOC、および、Interop 21stを構築していくShowNet 2014 NOC チームに次のようなアンケートをとりました。

1) 研究や運用や一般ユーザとして、普段かかわっているネットワークやネットワーク構築技術に関して、3年後はこうなっているという予想図を下記の3ケースで大胆に予想してください。

- ワーストケース(こうなっていたらいやだという構成)
- 現実路線(ビジネスとしての硬い構成や方向性)
- ベストケース(自分が欲しいと思っている技術革新・標準規格の構成)

2) 2015年Apricot/APNIC 日本開催や、IETF 94th Yokohama までに普及しておいて欲しい標準規格やインターネットサービス、解決しておいて欲しい諸問題を教えてください。

3) 2020年東京オリンピックまでに実現していて欲しい、標準技術やインターネットサービスを教えてください。

4) 30th Interop Tokyo (2023年)に、「こうなってたらいいなぁ」という、漠然とした夢を教えてください。


このアンケートに対して、NOC アドバイザリ、新旧NOC チームから、真摯に真剣に考えたであろう、さまざまな『解体・再構築しないといけない問題』と『』、『期待する技術、技術革新』が浮かび上がってきました。アンケート結果を踏まえ、今一度インターネットの設計方法、運用方法、構築技術を『解体』し、よい意味で枯れた(Legacyな)技術は継承し、新しい技術や設計スタイル、運用方法を織り交ぜた『再構築』が必要だとNOC ジェネラリストは考えました。(ちなみに私の乗っている車はSubaru Legacy 4WDです。)

そこで、Interop 21st からInterop 23rd までの連続したテーマとして『Scratch and Rebuild the Internet』と設定しました。『Scratch and Rebuild』という言葉はソフトウェア開発でよく使われる言葉で、一度行き詰ったソースコードは一から書き直してみるというものです。その際に、結局最初に作ったものと同じになった場合は、そこは確かによい設計であり、書き直した新たに加えたアイデアでよりよくなるという、PDCA(Plan-Do-Check-Act)開発スタイルの基本概念になります。まさに今、インターネットの解体と再構築をShowNet にて行っていきます。

さて、話を元に戻し、アンケートの内容ですが、非常にたくさんの意見、キーワードがNOCおよびNOCアドバイザリの皆様から集まりました。 1回のゲンバブログで語りつくすのはとてももったいないため、ShowNetマガジンと連動した連載企画として、順次ゲンバブログで公開していくことになりました。まず、NOC アドバイザリ(おじさん)たちが考え、今のインターネットを作っている現NOC メンバー(わかもの)への期待をいくつか紹介します。(多くのNOC アドバイザリの皆様から『未来は君たちのものだ』との回答をいただきました:))。そして、次回以降は、2014年の注力4テーマに沿ってShowNet 2014 NOC チームの『生の声』をShowNet マガジンと連動企画として紹介していきます。その後、今年のHot Topic にちなんだShowNet 2014 NOC メンバーが考えるワーストケースと、夢とそれを踏まえたShowNet 2014 でのBest Current Practice の紹介を行っていきます。

まず、一人目ですが、東京大学 特任准教授である小林克志さん(ikobさん)が考えるWorst Case、 Current Practice、 Best Case です。Ikobさんは、 IETFやACMなど学術から標準化などいろいろなところで活躍されております。また、NOCチームから『仙人』とよばれるほど知識も幅広く、無線からCPUアーキテクチャ、マルチキャスト、輻輳制御など、幅広い技術課題に対して豊富な知識と経験を持ってらっしゃる方です。幅広い知識をもっているだけあって、いろんな角度から現実の課題を切っており、「さすがikobさん!しびれる!」とNOCジェネラリスト一同で唸りました。


<質問1>
- 研究や運用や一般ユーザとして、普段かかわっているネットワークや ネットワーク構築技術に関して、3年後はこうなっているという予想図を 下記の3ケースで大胆に予想してください。



-- ワーストケース (こうなってたらいやだという構成)

<回答>

- 技術革新が進まずに、帯域不足による輻輳やパケ詰まりがいたるところで起こる。
- 無線 LAN では2.4G 帯につづいて 5G 帯もAP が密集した場所では使い物にならなくなる。
- 仮想化によるサーバ集約が限界にサーバ消費電力が下げ止まりデータセンター(DC) の能力を上げられない。
- サーバの I/O 性能がボトルネックになって DC の処理性能が上がらない。


-- 現実路線 (ビジネスとしての硬い構成や方向性)

<回答>

- コアルータビジネスの行き詰まり、汎用スイッチ LSI / ソフトウェアルータへのシフト
- 無線はどうしょうもない。エリア毎に強制的に調整する枠組みが登場するかも
- 仮想化技術は成熟期へ(ブームの終焉ともいう)
- I/O 性能重視サーバへのシフト (例えば、HP Moonshot、 AMD/Seamicro)


--ベストケース (自分が欲しいと思っている技術革新・標準技術と組み合わせた構成

<回答>

- 遅延をコントロールできる『インターネット技術』(私のマイブームは「遅延」なのです)
- 回線あたりの帯域性能をあげることが困難ななかでネットワーク全体の性能を上げるアーキテクチャ
- 外付けDRAM、 HDD、 BUS がなくなる、CPU - FLASH、 CPU - Ethernet が直結するような簡単でスケールアウトが容易なアーキテクチャ

<質問2>
- 2015年Apricot/APNIC 日本開催や、IETF 94th Yokohama までに 普及しておいて欲しい標準規格やインターネットサービス、 解決しておいて欲しい諸問題を教えてください。

<回答>

- ゲーム、対話型 Web サービスの体感品質に影響のある遅延を抑える技術、 AQM (PIE) とか(日本には関係ないかもしれない)
- WPA2 / WEP 共有鍵を聞かなくても使える WiFi 、ザル WiFi 気分で使いたい (すでにEAP-SIM でほぼ実現している)
- Felica/SUICA セキュアエレメントの入った SIM (これは昨年 10 月から香港でトライアル中なので時間の問題?)



<質問3>
- 2020年東京オリンピックまでに実現していて欲しい、 標準技術やインターネットサービスを教えてください。

<回答>

- 遅延を自由にコントロールできるインターネット
- WLAN の接続に何秒も待たなくて良い WiFi (期待をこめて802.11ai とか)
-インターネットで使える EtherOAM



<質問4>
- 30th Interop Tokyo (2023年)に、「こうなってたらいいなぁ」という、 漠然とした夢を教えてください。

<回答>

- Interop Tokyo (と ShowNet)が続いていること。
- NOC アドバザリに呼ばれなくなること。
- 幕張まで行かなくても HotStage がリモートでできる環境
- 帯域をいくらでも増やせるインターネットアーキテクチャが普及していること
- マイナンバーでもなんでもいいから信用情報管理して欲しい、(非正規雇用の身分では)賃貸借りるときとかメンドクサイ


二人目ですが、NTT 西日本の沖本忠久さんです。沖本さんは Interop ではBroadBand Solution ShowCase やShowNetTVでのIPv4/IPv6 マルチキャストでの映像伝送トライアルなど『通信と放送の融合』やそれを支えるネットワーク技術の設計、構築などに深く携わってきました。やはり東京オリンピックを見据えた『通信と放送の融合』と『新たなネットワークバックボーン』を今後どう進めていくかということに関して真摯なご回答をいただきました。


<質問1>
- 研究や運用や一般ユーザとして、普段かかわっているネットワークや ネットワーク構築技術に関して、3年後はこうなっているという予想図を下記の3ケースで大胆に予想してください。



-- ワーストケース (こうなってたらいやだという構成)

<回答>

日本経済の景気が回復せず、 既存ネットワークの延命措置が取られ続けるケース。情報系の設備投資抑制は、 コストカット時に真っ先に検討されているため、特に、セキュリティー対策や Windows95リプレース対策などがとられず、ウイルス感染したPCが犯罪の温床になったり、リストラなど就職難による「マネーミュール」犯罪に加担する 個人が増えるケース。個人のモラル向上も含めて、企業側への対策促進が必要と感じている。必要に応じた国の予算措置なども。

-- 現実路線 (ビジネスとしての硬い構成や方向性)

<回答>

IPv6への緩やかな移行を業界全体で後押ししつつ、特にトラフィックが増大して いる動画系コンテンツに対して、キャッシュ導入やCODEC新技術(H.264->H.265) による帯域抑制効果があがるネットワーク構成変更が望まれる。


--ベストケース (自分が欲しいと思っている技術革新・標準技術と組み合わせた構成 )

<回答>

スケールの観点から、現時点では大規模に展開できていないSDN/NFV技術の技術 革新が進み、適材適所に導入され、UX向上が期待されるNW構成に変貌していって いることを望む。



<質問2>
- 2015年Apricot/APNIC 日本開催や、IETF 94th Yokohama までに 普及しておいて欲しい標準規格やインターネットサービス、 解決しておいて欲しい諸問題について

<回答>

ANDSFのような、モバイル端末における、シームレスでUX向上に寄与する、 ネットワーク切り替え技術は普及しておいてほしい。 また、Wi-Fiの電波干渉抑制技術などの新たな技術革新、周波数割り当ての 見直しなど、抜本的な改革も期待したい。



<質問3>
- 2020年東京オリンピックまでに実現していて欲しい、標準技術やインターネットサービスを教えてください。

<回答>

海外からの来日されるゲスト向けに、空港から会場、ホテルなどの生活圏に、 固定とモバイルのシームレスなインターネット環境を提供し、位置情報や個人 プロファイルに基づく、レコメンデーション的な情報提供サービスが提供されていること。



<質問4>
- 30th Interop Tokyo (2023年)に、「こうなってたらいいなぁ」という、 漠然とした夢を教えてください。

<回答>

「TCP/IPなんて、懐かしいよね。」という新たなプロトコルベースのNWが組み あがっているといいな。


以上、

今回は、お二人に聞いた未来予想を生々しくご紹介させていただきました。これだけ現状を心配しつつも、やはりインターネッ トに対して夢を持っています。

皆さんだったらどんな未来を想像しますか?

次回以降は今年のShowNetのテーマであります、 Scratch and Rebuild the Internet - phase 1 の 4つ注力テーマに関して、NOC メンバーへの座談会から得た「生の声」を掲載 していきますのでご期待ください!




このページの先頭へ

ニーズを満たす製品はコレ!

お探しの製品、お抱えの課題にピンポイントでお答えします

注力カテゴリー

  • クラウドコンピュ―ティング
  • ワークスタイル変革
  • スマートデバイス対応
  • 無線LAN
  • セキュリティ リスク管理
  • IoT/M2M
  • 仮想化
  • 次世代データセンター
  • グリーンICT
  • SDI/NFV

出展者募集中 お問い合わせはこちら

  • お電話でのお問い合わせ 03-6431-7801
  • Emailでのお問い合わせ sales-info@f2ff.jp
  • Webでのお問い合わせ

同時併催イベント

  • IMC TOKYO 2014
  • デジタルサイネージジャパン2014
  • L2014
  • アプリジャパン2014

昨年のINTEROP

  • INTEROP 2013