あらすじ
ShowNetにはケーブルショップと呼ばれるケーブルなどの品出しをおこなう空間があり、そこを管理する店長は今日もつぶやくのでした。

ファイバチェック大会編:

イントロ
Interop の会期は 6 月中旬の 3 日間ですが、インフラに関係する実際の作業は、2 ヶ月前の 4 月から始まります。ShowNet では、シングルおよびマルチの光ファイバ・ケーブルが 100 セットほどあり、長さは 500 m ~ 100 m、芯線の数は 12 芯~ 2 芯までとさまざまな種類の光ファイバが、糸巻きのボビンを大きくしたような大型の木枠に巻きつけて倉庫に保管していただいており、これらを通称で「樽ファイバ」と呼んでいます。これらの樽ファイバを毎年、幕張メッセまで運んでは樽から巻き戻して敷設、会期が終わると取り外し、樽に巻き直して、倉庫に保管を繰り返し、大切に使用しています。普通のネットワークならば、一回敷設したら終わり。取り外して巻きなおして再利用などと言うことは絶対にしないと思います。そこがShowNet の特殊な環境であり、ある意味、長年にわたり耐久試験を繰り返しているようなものです。そのため、これらの光ファイバ・ケーブルが途中で切れていないか、光ロスが規定値以内に入っているかという試験を、ケーブル・テスタを使用して毎年 4 月末ごろに実施しています。これをファイバチェック大会と呼んでいます。

Day1:樽ファイバチェック
今年も始まったぞ。さあ、光ファイバたち今年もがんばってくれ。なるべく大切に扱いながら使用しているのだけれど、毎年、数本の光ファイバがだめになるんだよ。ここまで過酷な環境にも関わらず、文句も言わず?働き続けてくれるので愛情すら感じるぞ。今年もたくさんのボランティアに参加していただきありがとうございます。最初のころは、少人数で試験用テスタの台数も少なく、測定データも手書きで写し取っていたりしたため、2 日間かけて試験したよな。最近は、テスタも進化して以前の 1/10 の時間で測定することができるし、台数も数台確保できるようになった。なにはともあれ、ボランティアで参加してくれる方が増えたことは大きいよね。実際、実質半日で作業を終えることができるようになった。
ここで苦労するのは、なんといっても汚れとの戦いです。光ファイバのコネクタ部分の先端、つまり光ファイバ同士をコネクタで接続した場合の接触部分が非常に汚れている。やはり展示会場の埃や粘着テープなどからの付着物、手脂などが、会期中や後片付け時にどうしても付着してしまうんだよね。そのため、試験する前には必ず、クリーナで先端部分をふき取ってから試験を行わないといけない。特に頑固な汚れは、アルコールと麺棒を使用して丁寧にふきふきと。よしこれでOK。一見地味に見える作業と思うかもしれないが、これは非常に重要なことで、実に光ファイバネットワークにおける問題の70% 以上がこれらの汚れ等が原因であるという報告も出ているのですよ。使いまわしをしている Interop の光ファイバ・ケーブルに限らず、普段のネットワーク管理の上でも同様で、新品のケーブルだから、あるいはダスト保護キャップが被さっているから汚れているはずはないだろうと安心するのは大きな間違いであり、製造上の過程で埃や屑が付着していることもある。ネットワーク上に光ファイバ・ケーブルを差込む時は、一連の儀式として必ずクリーニングをするということを心がけておくことで、後々の問題を防止することにもつながることをお忘れなく。とひとり呟く。

それでは、本題のテストに入ろう。光ファイバ・ケーブルの場合、入力側と出力側として通常 2 本 1 対で使用するのが基本です。敷設する前の状態では、どちらのケーブルを入力側、出力側として使用するかはわからない。そのため2 本のケーブルのそれぞれの損失を双方向にて測定します。一般的な光源と光パワーメータの組み合わせによる測定だと、合計 4 回の測定をしなければなりません。しかしながら、最近のテスタは優れており、これらを 1 度の測定で行ってくれます(途中でケーブルの入れ替えが必要ですが)。さらに、測定結果が規格の範囲内に適合しているかどうかの合否判断まで行ってくれる。その上、結果データまで保存することができるため、時間短縮の大きな要となっているんだよ。

測定そのものはあっという間に完了するのだけれど、一番時間がかかり面倒なのは、いったん巻き取ってある光ケーブルのコネクタ部分をほどいて、測定器につなぐ作業と、テスト終了後の巻き戻しという作業なんだよな。非常に地味な作業で、これを黙々と繰り返していくため... あー飽きてきた。いつもながら非常に忍耐がいる作業だ。また、コネクタ部分が破損、あるいは磨耗してルーズな状態となった光ケーブルは、その部分を切断して、新しいコネクタを取り付けるということを何年も繰り返しているのでう、ケーブル長がそれぞれのペアで異なっていたりして、テストがしづらくて大変!そろそろ新しいのを買おうよ。とおもう今日この頃です。光ケーブルは高価なため、なかなか新調するわけにも行かないのだよね。だからこそ、過去にメーカ様にコントリビュートしていただいた光ケーブルを修繕しながら大切に使用しないとね。これを読んでいただいて、コントリビュートしてみようと思われるメーカ様がいらっしゃいましたら、運営事務局まで一報ください(悲痛の叫び!)。

ここ数年は、測定データを保存しているため、経年変化の傾向を見ることができるのですが、これだけ過酷な利用を強いられているにも関わらず大きな変化は見られません。コネクタ近辺がだめになる場合を除いて、光ファイバ・ケーブルは、過酷な環境にも耐えることができ長寿命であることを実感している今日この頃です。

Day2:メッセファイバ編:
今日は、幕張メッセの会場内に張り巡らされている光ファイバ (ShowNet では「メッセファイバ」と呼んでいます) の試験日だ。幕張メッセの地下には、ピットと呼ばれる場所が何箇所かあり、電力、電話、もちろん光ファイバも含めてライフ・ラインが縦横無尽に張り巡らされていて、このホール間や会議棟の光ファイバのロス試験を行うのだが、毎年のことながら、暗くて暑くてジメジメして、特別手当でもでないかな。かき氷をバケツ一杯とか。それにしても、今でこそ、このように地下に光ファイバ・ケーブルが敷設されているが、10 年前にはまだ光ファイバのインフラはなく、会場間の上空に「メッセンジャ・ワイヤ」と呼ばれるワイヤを張り巡らせて、このラインに沿って会場間に光ケーブルを配置していました。この当時は、クレーン車や高所作業車を使ってブースを設営している出展者様がいる場合に、何名かでワイヤを切ってしまわないかと注意を払って監視していたのを思い出すね。1 ホールから 8 ホールまで、すべてのホールを使用して Interop が開催されていたときは、メッセファイバの試験で、会場の端から端まで何往復もして足が棒のようになったんだよ (皆さん、幕張メッセの 1 ホールから 8 ホールの端まで何メートルあると思われますか?なんと直線距離で 500 m はあります。これを一往復するだけで 1 km! そりゃあ疲れるよね)。メッセファイバは地下にあるため、携帯電話電が圏外となります。そのため、地下への入り口のところに 1 人、連絡役の方がいて、携帯電話で別のピットの入り口のところにいる連絡係と通話をしながら、地下で作業をする人に大声で叫んで 1 本ずつ試験を行っていたため非常に時間がかかっていました。いまでは、ケーブル・テスタの便利なトーク機能 (親機と子機の間に光ケーブルまたはメタル LAN ケーブルを接続するだけで、双方で通話ができるという優れもの) を使用することで、この手間は解消されました。最初に「何の何番に接続する」というルールを決めておけば、双方で簡単に会話ができ、次の作業への移行も簡単になります。これらのツールのおかげで、今までは丸二日かかっていた作業が1 日で済むようになりました。非常に助かる!さらに会場がコンパクトになり、ケーブル・テスタの台数も確保できるようになったおかげで、最近では半日強で作業が完了します。実は会場だけではなく、会議棟の上下間でも同様に光ファイバの損失試験を行っています。過去にInterop に来場された方は、ご存知かと思われますが、会議棟では無線 LAN の提供をしています。これらの無線 LAN が問題なく利用できるのも、我々の影ながらの努力と支えがあってこそ実現しているのです。

なぜ、こんなにも労力を払って試験するのかって?答えは簡単。インフラはあって当たり前、正常な状態で当たり前だからです。一旦敷設、設置した後に問題が発生した場合、やり直しが利かないからです。あるいは、倍の労力が必要となるからです。だから手間隙をかけて事前に試験をするのです。逆な言い方をすれば、これらに問題があると、どんなにすばらしいネットワークを組んだとしても稼動しないということにもなるからです。

みなさん、われわれインフラ・チームの苦労を理解していただけましたか?しかし、これで終わりではありません。次回は、会場入りのホット・ステージ期間でのつぶやきです。