Interop 2013 ShowNet NOC 伊藤 孝一


何かと騒々しい春ですね。こんにちは、Interop 2013 ShowNet NOCメンバーの伊藤と申します。

今回はShowNetのファシリティについてご紹介したいと思います。早速ですが、NOCチーム内でShowNetのファシリティといいますと、
・ShowNetで使用する機器を搭載するラック
・その機器に供給する電源
・機器間を接続するケーブル
・幕張メッセのホールを結ぶ光ファイバ
を指します。どれが欠けてもShowNetを動かすことはできません。当然ですよね。それぞれとても重要な要素でどれ一つ疎かにできないのは皆さんもよくご存知かと思います。ファシリティ担当はこれらの事前準備から構築、運用を担当するのですが、もう一つShowNetを動かす為にとても重要な要素があります。それは・・・

熱対策

なんです。


2009年以降、ShowNetのNOCブース(ラックを20本近く並べた巨大なブース)は展示ホール内に設置されています。

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写真 1 Interop2009 ShowNet NOCブース


NOCブースは毎年ラックの配列が変わります(変えます)。コの字型に並べる年もあれば円形に配置した年もあります。2011年はNOCブースを2つのホールに設けました。おかげで忘れられない年になりましたが・・・。ShowNetはショーなので、このような見せる工夫がラックの配置にもなされます。これがファシリティ担当の頭痛のタネになるのです。
一般的に通信機器やサーバ、ストレージ機器を設置し運用する際には専用の部屋を設けて専用空調を設置したり床上げを施したりします。機器を正常に動作させる為に空調で雰囲気を温度最適化し、配線スペースを確保するために床を二重床にして電源や通信線を配線します。データセンターなどでは床下を効率的に各ラックへ冷気を運ぶために使用したり、冷気と排気(熱)が混ざらないようにラックと空調を配置しますよね。ですが、NOCブースは展示ホール内に設けられるので、写真1のようにラックはオープンスペースに設置します。当然、電源も床に敷設されます。通信ケーブルはラックの背面にフックを引っ掛けて、なるべく床に敷設しないように配慮します。ラック内で完結する通信ケーブルは可能な限り最適な長さのケーブルを使用してラックからはみ出さないように、そしてラック前面から搭載している機器が良く見えるように、つまりラック前面から極力ケーブルが見えないように機器の側面や後方に整理します。その為、ラックの後扉は基本的に開けっ放しになります。


ShowNetは短期決戦


ここで少し視点を変えてみます。
当然ですが、ShowNetのNOCブースは展示会終了後に撤去します。展示会最終日は17時でクローズになります。ここから何時間で撤収が完了すると思いますか。
答えは、"約5時間"です。ラックも機材もケーブル類もすべて片付けます。設営にはもう少し時間が掛かりますが、ラックを据えて機器に電源が投入され幹線部分の配線が完了するまでが大凡2日以内ですから、まさに短期決戦なのです。
事業用のファシリティと違い、超短時間構築と超短時間撤去を前提とし且つ見せることも考慮しなければならないので、いろんなものが犠牲になります。その結果、ShowNetのファシリティにおいて最も頭の痛い問題、それが熱対策なのです。
ラック前面はアクリル扉なので前面からの自然吸気は期待できません。また大掛かりな空調設備は時間と排水処理(ドレン)の問題があるので、スポットクーラー程度しか用意できませんでした。ですので、これまではスポットクーラーと大型扇風機が熱対策の大きな武器でした。

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写真2 スポットクーラー(2010年に使用)


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写真3工場扇(2011年に使用)

とはいえ、スペースの制約からスポットクーラーや工場扇を闇雲に配置することはできませんので、機器から発せられる警報やサーモグラファーを使用した温度チェックを行い対策を施していきます。また温度センサーや温度センサー付きPDU等を用いて雰囲気温度の常時監視も行います。機器によって暑がりな子と我慢強い子、いろんな個性がありますので、単体センサーの併用が欠かせません。


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写真4 サーモグラファーで温度をチェック


屋内とはいえ、広大なスペースですから屋外の温度変化の影響を多分に受けます。その為、温度状況は刻々と変化します。特に展示会初日は開場と同時に多数の来場者が展示ホールに流れ込んできますので温度変化激しく、ファシリティ担当としては非常に緊張する瞬間です。ShowNetは出展社ブースへInternet接続を提供していますから、万一ShowNetがダウンしてしまうと出展社ブースに多大なご迷惑をお掛けしてしまいますので、準備期間から熱問題が頻発した年の展示会初日は本当に頭の痛い日でした。

熱問題から解放された2012年

ところが、昨年(2012年)はそんな熱問題から解放されました。
我々NOCチームは議論を重ねた結果、画期的なシステムを導入したのです。禁断の架台を設け、クリーンルームなどで使用されるエアーカーテンを架台内部に設置し、通常とは逆の上向きに送風させました。さらに架台内部にスポットクーラーからのダクトを突っ込み冷気を送りこむという仕組みです。

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写真5 架台内部の作り込み作業

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写真6 NOCブース DCゾーン


これによりラックへの機器搭載作業開始が例年より半日以上遅れましたが、熱の問題からは解放されました。しかしラックがいつもより30cm以上持ち上がった為、その後の機器ラックマウントや配線作業が困難になりました・・・。どうやら頭痛の原因は熱だけではなかったようです(涙)
もう一つ2012年に投入された熱対策兵器をご紹介します。

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写真7 どでかファン

3相200V入力、最大風速20m/sの送風機です。これまで使っていた工場扇とは比べものにならないスペックでした。残念ながらあまりの音と風量のせいで数回の試運転で使用を断念しました。(最後の切り札という説もありましたが・・・)最近は静音型が出たようなので、造作の強度を上げれば使えるかも知れません。

今日現在、2013年のNOCブースデザインは未定です。(汗)今年は何が頭痛の原因になるか未だ想像もつきません。(想像したくないが本音かも・・・)
普段あまり意識されることのないファシリティ、だけど重要なネットワークを支えるのに必要不可欠なラックやケーブル、環境モニター等々にも愛情をもっていただければ幸いです。